@ バルセロナとガウディの作品群  
     
A バレンシアからグラナダ  
     
B アルハンブラ宮殿からミハス、ロンダへ  
     
C イスラム文化漂うセビリア、コルドバ  
     
D マドリードと古都トレド  
     
E 一般情報  
     
     
@ バルセロナとガウディの作品群
  私は個人旅行が好きなのであるが、今回は典型的な団体ツアー、JTBの「旅物語」による「スペイン感動の世界遺産紀行8日間」に参加した。2007年8月下旬、旅行代金は1人約34万円+空港税・燃料サーチャージ代。妻と2人で参加したので2倍支払った。夏休み期間中で少々高い気がしたが、スペインの世界遺産を中心に見所満載のツアーで、なかなか良かった。

2007年8月25日(土)午前10時半、中部国際空港発、フィンランド航空080便(写真1)に搭乗する。航空会社未定の団体ツアーのため旅行直前まで航空会社が決まらない。ユナイテッドマイレージプラスでマイルを貯めている私としてはフィンランド航空ではマイルが貯まらず非常に残念である。(私がどんなにくやしがっても妻は一向に気にしていない。彼女はルンルン気分である。)

飛行機はエアバス340。ワイドボディの大型機でエコノミーの座席配置は横2ー4−2の標準。しかし、前後の幅(シートピッチ)が狭い。機内食のランチ(写真2)は肉、魚等の選択もなく、全員同じメニューで、味もいまいちであった。それでも、窓側の席に妻と2人で座り、空の旅(写真3)を楽しむ。ここで、一句。

「狭くても、楽しく乗れる、エコノミー」

ヨーロッパまでのフライトは長い。到着1時間くらい前の軽いディナーの後、フィンランドのヘルシンキ空港に到着。ここで飛行機を乗り換え、バルセロナへ。

現地時間、8月25日夜9時過ぎにバルセロナのホテル「バルセロ・サンツ(写真4)」に到着。バルセロナのサンツ駅の真上にある大型4星ホテルである。日本からのロング・フライト後の夜なので、シャワーを浴びてすぐに眠りに入る。

気持ちが高揚しているせいか5時間くらい眠ってすぐ目覚める。ヨーロッパの初日、ツアー客一番乗りで朝食レストランに行く。朝食はアメリカンビュッフェでチーズ、ハム、パンの種類が多く、結構うまい。また、各種フルーツは甘くて絶品。団体ツアーにしてはホテルも食事も合格点である。さい先がいい。なんだか嬉しくなる。

朝食後はすぐに専用バスでバルセロナ市内観光に出かける。まずは、ガウディにより増改築された邸宅、世界遺産「カサ・バトリョ」(写真5)を見学。外壁に貼られた色とりどりのガラスモザイクや何やら恐そうなバルコニーのデザインに驚く。この建物のテーマは「海」だそうだ。次に、ガウディの設計・建築による邸宅、世界遺産「カサ・ミラ」(写真6)を見学。カサ・ミラは直線を排しすべて曲線で表現されているという。この建物のテーマは「山」だそうだ。何れにしても、バルセロナの街の中心にあるこの2つの建物を見て、私は非常に違和感を感じた。小さな芸術作品ではなく、大きなビル全体を造形芸術にしてしまったガウディは普通の人間ではない。天才のすることは凡人の理解を超える。しかし、圧倒的な芸術性があることは確かである。

次に世界遺産「グエル公園」に行く。ガウディの壮大なる夢の世界をゆっくり歩いて見てまわる。正面大階段(写真7)にあるドラゴンの噴水がおもしろい。多彩色のセラミックスで作られており、ドラゴンにしては何だか間が抜けており、口の中に手を入れても恐くない。ここを上がるとグエル公園内の最高傑作「中央広場」(写真8)に出る。かなり広い。モザイクタイルでできた世界一長い波状ベンチに腰掛け記念写真。

アーチ状になった遊歩道(陸橋)もおもしろい。極力直線を排除し、自然界の曲線を建築に取り入れ、植物のような造形美を創りあげている。陸橋の下部(写真9)を観察するとガウディの天才(異常)ぶりが分かる。平凡な私から見ると、ガウディの夢は壮大な狂気にしか見えない。その狂気を部分的にも実現してしまったガウディとグエル伯爵に敬意を表して、公園を後にする。

次に向かったのは、ガウディ晩年の傑作、世界遺産「サグラダ・ファミリア聖堂」(写真10)。これも私には狂気の気がした。サグラダ・ファミリアは1882年着工で現在も建築中、よって内部は工事現場のようである。ガウディが完成させたのは4本の鐘楼で、完成予定では全部で18本の塔になるという。サグラダ・ファミリアの内部(写真11)は、まるで巨大な木の幹が天に伸び上がっているような不思議な空間である。

ガウディの後は次なる狂気「ピカソ美術館」を訪れる。ピカソ美術館はバルセロナのゴシック地区にあり、バスから降りて狭い道を歩いて行く。ここにはピカソ初期の作品が展示されている。ピカソの初期の作品は写実画が多く、いずれも実に上手である。ピカソは早熟の天才だったことが良くわかる。

専用バスによる団体ツアーは非常に効率よく見所をまわってくれる。ピカソ美術館で芸術鑑賞をした後は、町の南西にある標高173mの「モンジュイックの丘」に行く。ここからはバルセロナ市街が一望でき、展望カフェ・レストラン(写真12)もある。個人旅行なら、ここでゆっくりティータイムか、夕暮れのバルセロナを眺めながらディナーにするのであるが、全く時間がない。写真を撮ってすぐ次の都市「バレンシア」に向かう。

バルセロナは実に魅力的な町である。超スピードの半日観光だけで通り過ぎるには惜しい。バルセロナは地中海クルーズの発着地としても有名で数多くの豪華客船がこの港から出港する。今度スペインに来る時は「7泊8日の優雅な地中海クルーズをした後にバルセロナに滞在する」というワンランク上の個人旅行などしてみたいものである。

 
     
A バレンシアからグラナダ
 

バルセロナからバレンシアへの途中、世界遺産でもあるタラゴナのラス・ファレラス水道橋(写真13)を見学する。高さ26m、全長217m。紀元2世紀、ローマ時代に建てられたとは思えないほどしっかりしている。この巨大な建築物は「水」を通す橋である。スペインの赤茶けた不毛の大地ばかり見ていると、水がいかに貴重かが分かる。スペインの車は埃りまるけのまま、普通に走っている。日本人がよくやる洗車などという発想は出てこないのであろう。

タラゴナから地中海に面した海岸線を200kmほど南下してバレンシアに到着。宿泊ホテルは「ウサ・マス・カマレナ」(写真14)という工業団地内のビジネス風4星ホテルである。豪華さはないが機能的な綺麗なホテルで、朝食ビュッフも美味しかったので不満はない。

翌朝(8/27)スペイン第3の都市バレンシアの市内観光に出かける。まずは市の中心、レイナ広場(写真15)。アウトドアのカフェもあり、カテドラルを眺めながらコーヒーが飲める。時間があればここでのんびりしたいところだが、ツアーは忙しい。すぐに、バレンシアのカテドラルに入場する。13世紀半ばに建設がスタートし14世紀末に完成した大聖堂。こんなに巨大な大天井(写真16)を14世紀にどうやって造ったのかと、疑問に思いつつ、その大きさと美しさに感動する。

カテドラル見学の後、15世紀末に絹の商品取引所として建てられた世界遺産「ラ・ロンハ」まで歩いていくが、月曜休館ため入場できなかった。そのかわり少し自由時間ができたので中央市場付近のカフェ・バーで生絞りの「バレンシア・オレンジ」(2.5ユーロ)を飲む。オレンジ3個からコップ1杯のオレンジジュースが目の前で出来上がる。本場で味わう本物のジュース。とろけるような甘さがあり実にうまい。これぞ旅の醍醐味!

バレンシアのレストランでの昼食メニューは、生ハムとサラミソーセージを盛り合わせた前菜と大鍋(約30人分)で作られたシーフードパエリア(うさぎの肉入り:写真17)だった。スペイン料理として名声を博しているパエリアはここバレンシア地方で生まれた料理である。本場で本物を食す。しかし、本場のパエリアは塩辛くてまずかった。半分以上残す。期待はずれ!

昼食後、ツアー一行はグラナダに向けて南下する。時々、地中海の美しい海岸を見ながらバスはひたすら走る。グラナダまで400〜500kmもあるので結構疲れる。

グラナダの宿泊ホテル「アバデス・ネバダ・パレス」(写真18)に到着。円形の白壁が美しいロビーが出迎え、いい雰囲気のホテルだったので、バスによる長旅の疲れも忘れる。ホテルのレストランで遅い夕食をとる。広いレストランであるが、我々の他にも日本人の団体客が夕食をとっていた。日本人御用達のホテルのようである。このホテルは昨年(2006年)できた新築の4星ホテルで大型のコンベンションが可能になっている。屋外プールもあり、リゾートホテルの雰囲気もする。ホテルの周囲にはスペイン風のお洒落なコンドミニアムが沢山ある。

夕食を短時間(1時間)で済ませ、急いでフラメンコショー(写真19)を見に行く。狭い会場は既に満員。ステージと客との距離が近く、一体感がある。ドリンク1杯つき、90分間のショーがはじまった。いきなり過激で情熱的なフラメンコの踊りに驚く。しかし、30分もすると、私は過激なショーに疲れてきた。バスの長旅の後のフラメンコは中高年にはきつい。ショーの後半は眠りはじめる。

 
     
B アルハンブラ宮殿からミハス、ロンダへ
 

翌日(8/28)はグラナダにある世界遺産「アルハンブラ宮殿」(写真20)に行く。アルハンブラはグラナダを見下ろす丘の上にある宮殿で眺めがいい。アルハンブラの心臓部は「ナルス朝宮殿」。外見は簡素であるが、内部はイスラム芸術の結晶で、訪れる者を千夜一夜の幻想的な世界に誘うといわれる。

ナルス朝宮殿内アラヤネス中庭(写真21)が素晴らしい。水面に映るコマネスの塔が印象的である。つい中庭の美しさにみとれてしまう。ナルス朝宮殿内のロス・レオネス中庭(写真22)は多数の柱とその周りの装飾が見事。ナルス朝宮殿内部の天井にもイスラム教の装飾がびっしりと施されている。しかし、キリスト教の装飾と較べて色彩がモノトーンでいまいちインパクトに欠ける。

アルハンブラ宮殿のコマレスの塔からは白壁の家が密集するアルバイシン地区(写真23)の風景がよく見える。アルバイシン地区はグラナダ市内で最も古い地区とされ世界遺産に登録されている。元来、イスラム教徒のための居住地区で、白壁を特徴とし、その景観を壊す開発は禁じられている。

アルハンブラ宮殿の城の外、チノス坂をはさんだ丘の上に、世界遺産「ヘネラリフェ」がある。14世紀に建設されたナルス朝の夏の別荘である。ヘネラリフェはシエラ・ネバダ山脈の雪解け水を利用し、「水の宮殿」とも呼ばれている。用水路や噴水のある中庭(パティオ)の回りには綺麗な花が咲き乱れている。乾燥し赤茶けたスペインの大地を見てくると、水と緑に溢れたヘネラリフェの庭園(写真24)は砂漠のオアシスのように映る。しかし、雨が多く緑に囲まれた日本からすれば、それ程めずらしい庭園でもない。美しい山河に囲まれた日本は「どこでもアルハンブラ宮殿」である。スペインに来て分かった日本の美しさ!

アルハンブラ宮殿をゆっくり見学した後、バスは白い村「ミハス」(写真25)に向かう。ミハスは世界的に有名な地中海のリゾート海岸「コスタ・デル・ソル」からいきなりそびえた山の中腹にある。よって、眺めは抜群である。

多数のレストランが山の斜面から突き出すようにつくられており(写真26)、ミハスからの絶景を見ながら食事が楽しめる。我々も絶景のレストランの1つに入り、ランチをとる。その後、ミハスの白い壁の街並みを見学する。ミハスの至る所にショップ、カフェ、レストランがあり、観光客も多い。山の斜面にもかかわらず地価は驚くほど高いらしい。

地中海に面したコスタ・デル・ソルのコンドミニアムに1週間くらい滞在して、晴れた日にはミハスの展望レストランにランチを食べに来る。そんな優雅なリゾートの過ごし方をしてみたいものである。

ツアーは忙しい。この日の午後はミハスから山越えして渓谷の町「ロンダ」に行く。かなりの山岳道路を延々と登っていくと内陸の丘陵地帯に入り、しばらくしてロンダに着く。今日のホテルは「エル・タホ」。ロンダ市街の中にある小さなホテルで、客室とレストラン以外の施設は何もない。朝食も貧弱。市内観光のアクセスがいいので、単に寝るだけのホテルと割り切るしかない。期待外れ!

ロンダはグアダレビン川によって深く刻まれた台地の上に作られた町なので、その川沿いの絶壁に面した白い街並み(写真27)は見事である。ロンダは人口約35000人の小さな町なのに実に立派な闘牛場(写真28)がある。ロンダは近代闘牛術の創始者「フランシスコ・ロメロ」が生まれた町であると聞いて納得する。夕方から深夜までロンダの歩行者天国(写真29)は一大ショッピング街となり観光客であふれる。白い布は日除けカーテン。夏の日中は相当暑いという証拠である。

夜のロンダ市街(写真30)の雰囲気もなかなかいい。連日の観光旅行で疲れていたが、私は1人で夜10時過ぎに市街を一回りしてみた。中心街はすべてライトアップされ、観光客も多いので全く不安は感じない。ライトアップされた夜のヌエボ橋(写真31)が美しい。これは18世紀に完成した石橋で深さ100m以上ある渓谷に架けられ、新市街と旧市街を結んでいる。ヌエボ橋を渡った旧市街は1485年までイスラム教徒の支配下にあり、白壁の家が細い路地に密集している。

それにしても、遠い日本から遠路はるばるスペインの田舎町ロンダまでよくやって来たものだと思う。個人旅行が好きな私であるが、さすがに個人でここまで来るには無理がある。団体ツアーに脱帽。

 
     
C イスラム文化漂うセビリア、コルドバ
 

翌朝(8/29)ロンダから人口約71万人、スペイン第4の都市セビリアに向かう。セビリアは8世紀から13世紀まで500年以上にわたってイスラム文化発展の拠点となった町である。13世紀中頃、イスラム勢力が一掃され、キリスト教徒の時代になり、アメリカ大陸発見以降は植民地貿易の中心地としてさらに発展する。歴史の長い期間にわたって繁栄を続けた都市であるので見所が多い。

まず、セビリアのスペイン広場(写真32写真33)に立ち寄る。スケールの大きさ、造形美、スペインタイルの美しさ等、個人的な感想ではあるが、スペインの建築物では私はセビリアのスペイン広場が一番気に入った。

次に、世界遺産の「カテドラル」(写真34)の見学をする。カテドラルの建築は1401年に開始され、1519年に完成。スペイン最大の大聖堂である。ローマのサン・ピエトロ寺院、ロンドンのセント・ポール寺院に次ぐ規模を誇るという。カテドラル内部(写真35)に入り、現地ガイドと一緒にじっくり見て回る。団体ツアー専用のイヤホンガイドは非常に便利である。ガイドから少し離れた椅子に腰掛けて休みながらガイドの説明を聞く。

カテドラルの一部にヒラルダの塔(写真36)があり、段差のない自然なスロープが作られており、塔の尖端まで登ることができる。天気がいいのでシャッターチャンス!あまり時間がないので急いで展望台に登る。ここからの眺め(写真37)は素晴らしい。

セビリア観光をした後、バスはコルドバに向かう。途中、ひまわりを刈り取った後の広大な畑を抜けていく。今から約1000年前、コルドバはスペインにおけるイスラム国家の首都で、当時の最大の町であった。

まず、イスラム教のモスクであるコルドバの世界遺産「メスキータ」を見学する。円柱の森と呼ばれるメスキータ内部(写真38)に入ると、キリスト教の寺院とは全く趣を異にする不思議な印象を受ける。メスキータ内、オレンジの庭越しにミナレットの尖塔(写真39)を見る。

メスキータの北西に小道が迷路のように入り組んだ地域(ユダヤ人街:世界遺産)がある。ユダヤ人はコルドバの経済を支える存在として歴代カリフに厚遇されていたが、キリスト教の反撃(レコンキスタ)終了後の1492年、ユダヤ人追放令によってこの町から姿を消したといわれる。ユダヤ人街の花の小道(写真40)を散歩する。

スペインには長年にわたるイスラム文化の繁栄の歴史があり、レコンキスタ後、新大陸発見により大航海時代の栄光を一手に引き受けさらに新しい歴史を作っていく。世界遺産が多いのもうなずける。
ツアー客は添乗員に導かれてコルドバ駅に行く。コルドバからマドリードまでスペインが誇る新幹線「アベ」(写真41)に乗車するのである。

 
     
D マドリードと古都トレド
 

マドリードのホテルは市の郊外にある立派な4星ホテル「アウディトリウム」(写真42)。客室のパンフレットを見たら、ヨーロッパ最大のホテルと書いてある。巨大であるが、ホテルの廊下の至る所に絵や彫刻が飾ってあり、まるで画廊の雰囲気である。ここで2泊できると思うと嬉しくなる。旅の最後を美術館のような美しいホテルで過ごせるのは実にありがたい。旅の印象が一段と良くなる。

朝食会場のビュッフェレストラン(写真43)も、壁一面に大きな絵が掲げられており、美術鑑賞しながら食事が楽しめる。選り取りみどりの朝食ビュッフェのメニューからうまそうな物だけ選んで自分の朝食メニュー(写真44)を作る。朝から食べ過ぎてしまう。もう十分満足!

この日(8/30)の午前はマドリード市内観光。まずはプラド美術館(写真45)を訪れる。「エル・グレコ」「ベラスケス」「ゴヤ」などスペイン絵画の傑作を鑑賞する。美術に詳しくない私としてはガイドさんの説明はありがたい。プラド美術館は絵画だけでも8000点以上の作品を保有し、絵画館としては世界一を誇るという。日曜日は入館無料というサービスもある。ヨーロッパ絵画に興味のある人にお勧めの場所である。

プラド美術館の入り口にゴヤの肖像(写真46)がある。ゴヤの「着衣のマハ」「裸のマハ」を見ずして帰れない。じっくり鑑賞する。18世紀後半のゴヤの時代に女性の裸の絵が許されたのか?と疑問に思っていたが、絵の所有者が「裸のマハ」は公に掲示せず、こっそり1人で見ていた、とガイドさんから聞いて納得する。

セビリアのスペイン広場が素晴らしかったので、首都マドリードのスペイン広場(写真47)はもっとすごいのかな?と期待して訪れたのであるが、完全にはずれた。中央に座っているのがセルバンテス、下方にあるのが馬に乗ったドン・キホーテとサンチョ・パンサ。

マドリード市内観光を早めに済ませ、次に向かったのは世界遺産の古都トレド(写真48)である。マドリードからバスで1時間強。アルカサル(宮殿)とカテドラル(大聖堂)がトレドの町にそびえる。トレドは古代ローマ時代から西ゴート王国、後ウマイヤ朝、スペイン黄金時代といった2000年にもわたる文明の痕跡を残しており、旧市街全域が「古都トレド」として世界遺産に登録されている。トレドのすごいところは、16世紀の面影が今なおほぼ完全に残されていることである。

タホ川の南側から見たトレドの町(写真49)は素晴らしい。三方をタホ川で囲まれたトレドは天然の要塞都市でもあったことがよく分かる。現地ガイドさん引率でトレドのカテドラル(写真50)に入る。フランス・ゴシック様式のこの大聖堂はスペイン・カトリックの総本山で、カテドラルの内部に入るとその豪華絢爛さに圧倒される。イスラム寺院のメスキータとの違いに驚く。カテドラル内部の天井壁画(写真51)もすごい。

トレド観光の後、マドリードに帰ってくる。マドリード市内の中心街でバスを降りマヨール広場(写真52)をぶらぶら歩く。4階建ての古風な建物に四方を囲まれたマヨール広場はいかにもヨーロッパらしい。私はこういう広場が好きである。マヨール広場には沢山のテーブルがセットされアウトドアのカフェ・レストランになっている。時間があればここでコーヒーでも飲んでゆっくスペインを味わいたいところであるが、ツアーは忙しい。マヨール広場を通り過ぎて、近くのレストランで夕食をとり、ホテルに帰る。

それにしても、マドリードの宿泊ホテル「アウディトリウム」は素晴らしい。1日中観光旅行で疲れて帰ってきても館内の美術品に癒される。ホテル内の至る所に美術鑑賞用スペースがあり、美しい絵画を見ながら休憩できる。1階廊下の片隅に置かれてある白亜の芸術作品と絵画(写真53)に見とれてしまう。

8/31、午前、マドリード・バラバス空港(写真54)を出発し乗り継ぎ地ヘルシンキに向かう。マドリード上空(写真55)から見たスペインの大地はどこも乾いていて緑が少ない。ドン・キホーテで有名な「ラ・マンチャ」はアラビア語で「乾いた土地」を意味するという。スペインからヨーロッパをひとっ飛びしてヘルシンキ上空(写真56)にくると森と湖の国「フィンランド」である。緑の森を見るとほっとする。

夕方、フィンランド航空079便に乗り日本に向かう。エコノミーの狭い座席であるが、午前中にマドリードで各自チェックインしたので窓側2席を確保。ほぼ満席のエコノミー席であるが夫婦でゆっくり空の旅を楽しむ。メニューの選択なしの機内食(写真57)は相変わらず良くも悪くもない。

幸運にも乗った飛行機は数ヶ月前に新規導入された最新鋭機材エアバスA340-300E型だった。ピカピカの機内(写真58)、エコノミー全席に配置された大型パーソナルモニターで映画やその他大いに楽しむ。

9月1日(土)朝、飛行機は愛知県三河湾上空(写真59)から伊勢湾に入り、午前9時、中部国際空港に到着。時差と睡眠不足で多少疲れがあるが、妻も私も気分はまだ旅行中。中部国際空港のお勧めスポット「展望風呂」に入ってから家路につくことにする。サウナに入り汗を流し、大浴場の湯船につかりながら、出発する飛行機を眺める。旅の余韻を味わうのに最高の場所である。是非一度体験してみては?

 
     
E 一般情報
  ◎ 社団法人日本ユネスコ協会連盟
http://www.unesco.jp/

トップページ上段の「世界遺産活動」をクリックすると、世界遺産についての詳しい説明がのっている。世界遺産には「文化遺産」「自然遺産」「複合遺産」の3種類があり、種類別世界遺産リスト登録件数は文化遺産660、自然遺産166、複合遺産25の合計851。(2007年7月現在)

◎ NHK世界遺産の旅
http://www.nhk.or.jp/sekaiisan/card/library.html

NHKが番組「シリーズ世界遺産100」「探検ロマン世界遺産」で取り上げた世界遺産を見ることができる。

◎ フリー百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)」
http://ja.wikipedia.org/wiki/

「スペインの世界遺産」を記事検索すると、スペインの世界遺産についての詳しい説明が見れる。

◎ ガウディの遺産
http://www.guell.co.jp/gaudi/

スペインの建築家、アントニ・ガウディが残したメッセージを探るサイト。ガウディの主な建築物が詳しい写真と解説付きでのっている。また、ガウディの関連資料も豊富なので、ガウディに興味のある人には必見のサイトである。

◎ ピカソ美術館(スペイン・バルセロナ)
http://www.museupicasso.bcn.es/eng/index_eng.htm

スペインのバルセロナにあるピカソ美術館の公式サイト(英語)
ピカソの作品と詳しい解説がのっている。

◎ プラド美術館
http://museoprado.mcu.es/index.php?id=50

スペインのマドリードにあるプラド美術館の公式サイト
日本語の案内もあり、代表的な所蔵作品の写真と解説がのっている。

                                        (2007年12月 掲載)